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文明の衝突

Samuel P. Huntington
鈴木 主税

集英社

グループ:Book

ランキング:27236

価格:¥ 2,940

ポイント:29 pt

発売日:1998-06

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カスタマーレビュー

簡略化したパラダイムを提示する危険性  (2008-10-14)
良くも悪くも、現代の国際関係論に大きく影響を与えた書物である。
この本の最も大きな問題は、文明を七つに分断し、その文明は必然的に対立すると主張した点にある。そもそも、日本を独立したひとつの文明圏とする一方で、アフリカ全てををひとつの文明圏としてひとくくりにする分類法にも問題がある。さらには、紛争の発生原因をあくまで文明という要素に集約させて説明しようとしており、政治的、経済的側面を軽視している。

筆者は、あくまでこの著によってパラダイムを提示できれば良いとして、それらの批判に対し取り合わない姿勢を見せているが、この簡略化した図式が、ネオコンのイラク戦略やタリバンのテロを補完する論理に容易に取って代わられることも認識すべきである。
よって、クリティカルな捉え方でこの本を読むべきだと主張したい。

予言のつもり  (2007-05-14)
あからさまな政治的意図に基づいて書かれた本。長い、退屈、的外れ。さすがにベトナム戦争時に「都市囲い込み」(名称は忘れたが、農村地帯を絨毯
爆撃して人を都市へと追い込むことによって相手を疲弊させること)を提唱しただけの
ことはある。アメリカの右派がどのようなことを考えているのかを知るのにはいいかも
しれない。現実を観察した結果「文明の衝突」があることを発見したのではなく、この
本に書かれているようなバイアスを通して世界を見ているがゆえに無用な衝突を起こす
のである。いま現在起きているアメリカとイラクの「文明の衝突」という図式は、こう
したアメリカの保守及び新保守が、その方が自分たちに都合がいいという理由だけで成
した単なるプロバガンダ以上の意味は持たないはず。内容がすべて間違っているとは言
わないが、鵜呑みにするのは危険。 

現在進行中のシナリオ  (2007-05-01)
グローバル化が進むと人々はアイデンティティを求めて違いを意識するようになる、という著者の仮説は面白い。著者の視点はアンチ普遍主義、西欧とイスラム原理主義の対立、中国を中心とした東アジア文明圏、といったところだがこれらは少しずつ顕在化してきている。自然とそうなっているのではなく、アメリカが意図的に衰退・撤収していくことにより実現されているようだ。世界が西欧の普遍的価値観によって統一されるより、多様性があったほうがよい、という思想が根底にあるように思う。観念的なフランシス=フクヤマの予測よりサミュエル=ハンチントンのほうが現実的である。まさに現在進行形のシナリオが本書である。

中華文明と日本  (2007-04-17)
 この本の凄さは数々あれど、日本がユニークだ、と指摘してくれた事は我々にとって特筆すべき慶事だ。
 私自身中国と20年余り付き合って来て、何だか違うなあ、と感じていたのだ。でも昔から日本と中国は「同文同種」が常識だったので、イスラム文明やキリスト教文明に比べて、やっぱり日本と中国は儒教や仏教や漢字で括られる、一つの文化圏なのかなあとも思っていたのだ。
 この本では日本は孤立したりアメリカと中国の間で振れたりし、最終的には中国に付く事になっているが、日本がユニークだと判ったからには別に中国に付く必要なんか無い。中国の現政権はイデオロギーで多民族を無理やり纏めようとしている時代錯誤の共産党だ。(中国とアメリカだけが、イデオロギーで纏まっている様な纏まっていないような、二大超大国というか、帝国、かな。後は殆ど概ね民族国家)日本にとって危うい事この上無いし、第一合わない。二つの民族(漢と和)は仲良くしようとしてもお互い生理的に気に食わない。中国を同じ文明の宗主国と仰ぐ(又はその反対の)事は、絶対に止めたほうが良い。前世紀に悲劇の結末を迎えたばかりではないか。
 でも、何でこうなるのだろう、と皆不思議だった筈だ。何でこんなにお互いの箸の上げ下ろしまで癇に障るのだろう、と。それにこの本は答えを与えてくれた。「違う」のだ。日本は日本で一つの文明で、中華文明では無いのだ。翻って、朝鮮半島は中華文明なのだ。だからずっと宗屬関係を維持出来、破局を迎えなかったのだ。
 他の文明圏に関しても、こんな「成る程、そうだったのか!」が一杯。是非読むべし。

「文明の衝突」から「世界文明」へ?  (2006-11-27)
 この本は、情報豊富で、いろんなことを教えられる。
ただ実際に読んでみると、世間でハンチントンの理論として語られていることと
実際のハンチントンの理論とがずいぶん違っていることがわかる。

 一番重要なポイントは、ハンチントンが「21世紀の初め」の世界についての「ひとつの仮
説」として、「諸文明の衝突」を語っているということである。

つまりずっーと「文明の衝突」の時代が進んでいくという、目的論的な歴史哲学が
語られているわけではないということだ。

 もう一つは、ハンチントンは「世界文明」ということを語っている、ということだ。
これは「諸文明の衝突」が揚棄(止揚)された世界を暗示する言葉のようだ。
ハンチントンは「世界文明」の出現の可能性を排除しないと言っている(77頁)。

 ハンチントンは『第三の波』という本を書いている。これは世界各地における民主化の
「第三の波」ということだ。そして彼は「第四の波」の可能性を論じたこともある。
この論理的な極限は、世界全体の民主化という、フランシス・フクヤマ的な世界と接近するの
だが、さすがにハンチントンは慎重で、そこまでは言わない。

 そうした本質的なハナシだけでなく、宗教や言語、政治闘争の展開論理、トルコと日本の比
較等々、個別に興味深いハナシがたくさん入っており、楽しい本だ。
翻訳も信頼できる。「州」と訳すべきstateを「国家」と訳してしまっているところが、1,2
箇所あった点が気になるだけだ。

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