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チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 (中公新書)
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チャーチルの米ソに対する不信感
(2008-08-23)
本巻で最も印象的なのが、戦争中から既にチャーチルがソ連の膨張主義を感じ取り、これに警句を発していたことである。チャーチルとスターリンのやり取りが本巻には収められており、これは超一級の資料であろう。チャーチルはスターリンとの交渉を通じて、ソ連には東欧を支配下に置く野心があることを察知し、アメリカに対しても注意を呼びかけた。しかし、戦争に勝つことしか頭に無いナイーブなアメリカは聞く耳をもたず、チャーチルはアメリカに対してフラストレーションを抱く。本書を読むと分かるが、チャーチルの「鉄のカーテン」は何も戦後に初めて言われたものではなく、戦時中から既にアメリカに対して警告を発するために使われていたことが分かる。第二次世界大戦から冷戦までの流れを知るのに、本書ほど優れた書物はない。
政治家的思考と軍人的思考
(2004-07-02)
前大戦を当事者が語ったという意味では、英宰相チャーチルと米軍人ウェデマイヤーの回想録が双璧である。米英が戦略上で最も対立したのは欧州における第二戦線をどこにするのかということだった。英国はバルカン半島に上陸し、東欧に進撃する案を主張したが、米国はフランスに上陸し、一挙にドイツを叩くという方針で両者は激突した。そしてスターリンは一貫して米側の支持者だった。米側は英国のバルカン上陸案を「弱腰」だと非難したが、結局チャーチルの深慮を見損なうことになった。チャーチルは、バルカン−東欧ルートを通し、東部戦線での戦果のソ連の独占による東欧の共産化を阻止しようとしたのであるが、ルーズベルトはじめ米側は戦後になって、はじめてチャーチルの戦略的思考の正しさを知ることになった。ほくそえんだのはクレムリンである。立場の違う英政治家と米軍人双方の回想録を読み合わせることによって、前大戦の全貌に対する複眼的な見方ができると思われる。

