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カスタマーレビュー ![]()
そううまくいくか
(2008-11-22)
1.私なりに内容をまとめると
世界には繁栄と無縁な10億人の人がいるが、それらの人が所属国は4つの罠にはめられて身動きが取れない。これを放っておくと他の50億人にとっても不利益である。そこで、これらの国の貧困問題を解決するには、成長が大事である。その成長を促す手段4つを、的確に、かつ効率的に取り入れるべきである(罠と手段については本をお読みください)。
2.評価
単なる著者の哲学ではなく、資料を駆使した上での結論のようなので(p314〜)、門外漢の私ごときの批判は難しい(資料に当たっていないので)。ただ、直感的には、疑問がある。
まず、輸出品目を増やすのは可能か?天然資源に比較優位があれば、輸出品目を増やす気になれないオランダ病もやむないだろう。その克服ではなく、それを前提として政策を立案したほうがいいのではないか?
第2に、貿易の多様性についてだが、50億人の人には多様性は不要なのか(農業補助金はその手段だろう)。10億人と50億人でルールが違うのはやむを得ないとは思うが、違った場合の不都合も考慮しなければならないのではないか。
第3に、軍事介入について。有益だとしても、どのような哲学に基づくべきかが明らかでないし(今までの価値観を超えないと他国を納得させられないだろう)、国際連合の問題にも踏み込めていないように感じた(拒否権をなくしたほうが介入は容易になるはずで、なぜ提言しないのだろう。既得権保護か)。
3.結論
長所星5つ、短所星3つ。短所は所詮直感的なものなので、星1つ減らすにとどめ、星4つ。
同じ、人類、として。
(2008-11-09)
著者は、最貧国が経済発展に見放されてしまう”罠”を、4つに分類。
それは、「紛争」、「天然資源」、「内陸国であること」、「小国における悪いガバナンス」。
翻って、なぜ、わたしの住む日本が経済発展を遂げられたのかを考えてみる。
勤勉な民族性? 日本人は、まじめだから?
それを全否定はできないけれども、海に囲まれ、これといった天然資源のない日本は、地理的なラッキーに助けられていたんだ、ということを改めて強く感じた。
注意すべき点は、最貧国=アフリカではない、ということ。
アフリカにも経済的に比較的豊かな国があり、アフリカ外でも困難に陥っている国がある。
当たり前のようだが、遠い国のことなので、つい勘違いしそうになる。
また、開発援助論の中では、民族の自決権をどうするか、といったことが議題になる。
だが、本書に登場するような国には、それ以前の助けが必要じゃないだろうか。
かわいそうな人々を見て、豊かな日本に生まれた自分はまだマシ、と比較優位に立って終わり、じゃなく、
人類が歴史の中で築き上げてきた人権思想が、世界という現場で、いままさに試されているんだと思う。
ともに生きたいのか、どうなのか、助ける力があるのか、余力がないのかー。
自分という個人単位でなせそうなことを考えたり、実践しつつ、
国家や国連などの行動を、注意深くウォッチしたいという気になった。
と、同時に、日本国内にも貧困が増えてきていることを忘れてはいけない。
遠くを視野に入れることで、足元もよく見える。
かなたの誰かを知ることで、わたしへの理解も深まる。
日本語を読める人になら、誰にだっておすすめしたい1冊だ。
今日の開発問題を考える際の一級書
(2008-11-08)
アフリカ問題の大家が、今日の開発問題の盲点に挑みます。ただ、大家といっても単なる学者ではありません。世界銀行の実務官僚の経験にうらずけされた実体験・豊富な資料を駆使して論議を進める姿に、英国の開発学の層の厚さを感じました。 中味といえば、漠然とした、植民地後遺症論やグルーバル化悪化論を退け、エビデンスを示しながら、先進国援助の問題、内戦がビジネスとなっトいるアフリカ諸国の現実、有効な対策を打ち出せないでいる国連機関の姿、独善的なNGOの現状を横軸に、ボトム・ビリオンの国が陥っている4つの罠の惨状を縦軸にして、世界人口の底辺の人々10億人の苦悩を記しているのは圧巻です。アフリカ問題、いや開発論を学ぶ方にとって必読の本と言ってけして過言ではありません。今、世界経済が沈滞に向かう中、このような人々の生活をどう守るのか、いや、寧ろボトムビリオンが広がるのをどう防ぐのか。80年代の世銀の構造改革路線の轍を踏まない工夫が求めれている時に、思考の出発点を提供してくれます。そういいながらなぜ評価が低いのか。それは訳文の質です。原著に忠実に訳さんとするあまり、日本語として非常に分かり難い表現が多々みられそれが核心的な部分の表現の箇所に多かったのが非常に残念でした。海外出張中にアメリカの空港で原著を入手してそちらで読了しました。少々辞書を引く労力を厭わなければ原著を読まれるのも一法です。
貧困国問題の冷静な分析と提案
(2008-11-03)
世界の極貧国についての原因分析と、それに対する対処を提案した本。先進国/途上国という二分法の中から脱出し、途上国の中にさらに最底辺国という区分を設けた。この概念設定により、極貧国を途上国一般の問題から切り離して提示する。こうした極貧国はアフリカに多く存在するため、アフリカ中心の議論だ。ただし、極貧であることがアフリカ固有の問題(「アフリカ・エフェクト」)だとは著者は認めていない。
本書は事例を提示した本ではない。アフリカの貧困の実態について、事例を挙げて提示したものではない。それは、ジャーナリストが鮮やかに書いている他の本を見ればよい。本書はデータを多く用いた、抽象的分析と提言の書だ。それも、全体的にきわめて冷静な、ある意味では冷酷な分析だ。貧困から容易に抜け出すことのできない国々の現状と、それに対してできることの僅かさ。その僅かな中でも、できるだけのことをなそうと提言する著者。非情な努力である。それは、こんなに貧しい人々が生きる世界に自分が生きていることへの強い憤りに根ざしている。
著者の分析によれば、極貧国を極貧から脱出できないようにする「罠」は以下の四つである。(1)紛争の罠、(2)天然資源の罠、(3)内陸国の罠、(4)悪い統治の罠。私には特に、天然資源に関する話題に眼を開かれた。資源があるからといって発展できるというより、むしろ資源がある方がその国を発展から遠ざける。また、資源国では民主主義よりも独裁制のほうが発展は早いという指摘。さらに、近年の中国が行っているアフリカ資源外交は、アフリカ諸国を貧困に固定するだけだ、という主張。
これら原因の分析に続いて、グローバル化が極貧国に与える影響が考察される。人・金・物の高い流動化は、逆に極貧国から資本を逃避させる結果になっている、と。以上をふまえて、四つの対策手段が語られる。(1)資金援助/技術援助、(2)軍事介入、(3)法の制定、(4)貿易政策。これらは現実的に語られている。資金援助が功を奏さないのはなぜか。ある時期までは技術援助のほうが有効であること。また、軍事介入の必要性。イラク、ソマリア、ルワンダ、マダガスカルの例が引かれる。さらにあまり重視されない、法制定の重要性と、関税を中心とする貿易政策について。加えて、これらの対策の検討に基づき、各国の援助政策の誤りや、クリスチャン・エイドなどNGOの誤りが鋭く批判される。
これらの分析や対策を「上から目線」「新植民地主義」「逆差別」と批判するのはたやすい。しかし実際に先進国は「上」にいるのである。軍事介入をしなければ、国は好転しない。極貧国を特別待遇しなければ、彼らは貧困から抜け出せない。理想を語ることは容易にできても、現実にできることはごく僅かだ。本書を貫くのは、現状についての冷めた眼と、ある種の諦念であろう。
私には次の言葉が印象に残る。特にアフリカ援助に携わるわけでもなく、アフリカ問題が単に「遠い国のことでしかない」私には。
「しかしあなたの仕事が開発と関係がないために、自分には責任がないと考えてはならない。あなたは市民であり、市民であることには責任が伴うのである。[...]この過失【第二次世界大戦における政治的過失】によって彼らの子供たちは大量殺戮されることになった。再び回避可能な大惨事へ迷い込むことを阻止するのは、すべての市民の責任である。/そして、それは避けることができる。」(p.285)
“グローバルな公益”としての「10億人諸国」の問題解決
(2008-09-06)
先ず、本書の原題である“The Bottom Billion(ボトム・ビリオン)”とは、豊かな世界の10億人あるいは開発途上にある40億人とは別の、後述する「罠」にかかり、「グローバルな堆積の最下辺に押し込められてしまった」(本書p.26)10億人の人びとを指す。地理的には、その人口の70%を占める「アフリカが問題の核心」(p.20)であり、《アフリカ+α、58ヵ国の小国》が対象となるようだ(p.21)。
著者のポール・コリアー(Paul Collier)教授(オックスフォード大学)は、アフリカ(経済)研究等を通じて「今も世界経済システムの底辺にある開発途上国」(p.5)の「問題の核心は成長であると確信」し、「彼らの社会における成長プロセスの失敗が、私たちの関心の中心でなければならない」(p.27)とする。「そして、この失敗からの救済が開発の課題の核心でなければならない」(同)という。
教授は、開発途上国の成長を阻害する「紛争の罠」「天然資源の罠」「内陸国の罠」及び「小国における悪いガバナンスの罠(=失敗国家)」を当書で指摘し、これら4種類の「開発の罠」に対する対応策・解決策についても、独創的な所見を披陳している。何よりも「底辺の10億人の国の問題を改善することは、グローバルな公益」(p.298)であり、教授は「定量的な研究」(p.286)の成果で、左右両派の浅薄な論理を一蹴する。
最後に、「軍事介入」についてであるが、教授はその有用性・有効性を認め、「例えばドイツと日本は永遠に彼らの歴史に隠れていることはできないし、国連安全保障理事会に入っていないことを不参加の口実にすべきではない。日独は大国であり、果たすべき重要な任務をもっているはずである」(p.300)と述べる。この点に関しては、教授の立言を字義通りに受けとることなく、日本の国情に合った慎重な対応が必要だろう。

