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流れよわが涙、と警官は言った (ハヤカワ文庫SF)

友枝 康子
フィリップ・K・ディック

早川書房

グループ:Book

ランキング:88337

価格:¥ 756

発売日:1989-02

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カスタマーレビュー

心が苦しくなります。  (2007-05-06)
本書のラストでの一場面は、なんでもない場面ながら妙に心に残る。人間の悲しみゆえの衝動がうまく描かれていると思う。そこに絵になる人物が配されているのでより印象に残った。
しかし、本書には見事に裏切られた。読む前は『存在しない男』となった主人公が日常を失くした悪夢世界からの突破口を捜し求めるサスペンスフルな話なのかと思っていたのだが、本書にそういったハラハラドキドキのスピード感は無縁のものであり、どちらかというと、思弁的な雰囲気さえ漂っているので驚いてしまったのである。描かれているのは相変わらずの不条理世界なのだが、人間の本質としての感情面が全面に押し出されているのだ。
余談だが本書を執筆していた時期、ディックは失意のどん底だったそうだが、いかにも彼の内面が溢れていて痛々しい感じだ。読了して、少し心が苦しくなってしまった。

ベスト3には入ると思う  (2006-03-29)
 三千万の視聴者から愛されるスーパースターのタヴァナーは、ある朝見知らぬ安宿で目覚めた。身分証明書もなくなり、誰も自分のことを知らない。そればかりか、国家のデータバンクにも彼に関する記録は存在しないのだ。 この世界では彼は「存在しない男」なのだ! 悪夢の突破口を必死で探し求めるタヴァナー。タヴァナーに興味を持ち、彼を追うバックマン警察本部長。果たして結末は?
 目が覚めたら、誰も自分のことを覚えていないというアイデアはとりたてて珍しいものではない。追う者と逃げる者との両面から「サスペンスフルな逃走劇」を描くというのもありがちである。しかしディックは通俗的な設定から極端に異様な世界を作り出した。にも拘わらず、この世界こそが我々の生きる世界の真の姿なのだ。二転、三転する劇的展開から浮き彫りにされるのは、頼りなく、それでいて圧倒的な力で我々を弄ぶ「現実」の不条理性だ。「現実」を生きることのやるせなさが全篇を覆っている。
 我々がこの絶望的な状況を切り抜けるにはどうしたらいいのだろう? 切り抜けられないまでも、何とか生きていくにはどうしたらいいのだろう? ディックはこの作品で答えを掲げている。それは愛であり、感情移入だ。精神的・感情的な意味での他者との連帯こそが我々を絶望から救う唯一の手段なのだ。
 ディック文学の到達点を示す傑作。1975年、ジョン・W・キャンベル記念賞を受賞。

混沌として謎に満ちた悪夢を描く奇妙な物語  (2005-06-22)
原題は「FLOW MY TEARS, THE POLICEMAN SAID」。

世界設定が混沌とした近未来のためSFっぽいが、
奇妙な因果律を奏でる純然たるファンタジー。
主人公タヴァナーは原因不明の奇妙な悪夢に落とされ、
その中でもがく姿が非常に悲劇的で同情を誘う。
謎の核心に近づいていく展開が見事な物語性を発揮しながら、
タヴァナーと出会う登場人物たちは非常に奇妙にもかかわらず、
魅力的できちんと現実感がある。
最後の最後で推測される因果律(謎)は、分かっても分かりたくない
不条理感たっぷりであるにもかかわらず、結末は見事であった。

世界設定は混沌とした近未来であり、物語全体に悪夢感が分厚い雲のように垂れ込める。
そして登場人物がハチャメチャという点が本作品の著者ディックの作品に
よく登場するため、ディックらしい作品と言える。
その一方で、起承転結やテンションコントロールがきちんと構成され、
読後に雲が晴れるような爽快感を与えてくれ完成度は非常に高い。
あまつさえ、本作品では、エピローグまであるのだ。
誠にディックらしくない。

思うに、物語を通して語られる主題は愛の形、幸せの形とは
一体なんであるか、という点であろう。
登場人物同士による関係の破綻がいくつも繰り返された最後に、
そこに当り前のようにあるべき存在として描かれた花瓶が、
最後の答えを訴えかけるようである。

何度も読み込む本ではないが、ファンタジーが理解できる人には、
ぜひ一度は読んでもらいたい名作である。

ディックの本でいちばん好き  (2004-04-08)
ディックの中では割と異色な作品かも。どうしても割り切れない感じが
好きです。
あとこの作品で出色なのが女性の描き方。主人公が関わっていく女性達
が皆ひと癖あり、そのややこしさが主人公を取り巻く悪夢のような状況
とリンクしてます。
「暗闇のスキャナー」と並ぶディックの裏ベストだと思います。

彼は決して、涙を流すことは無かった。  (2003-04-05)
とても難しい作品。
一回読んだだけでは、「なぜ彼が違う世界に来てしまったのか?」という
理由が理解できないと思う。かく言う私は5回ほど読んだが、未だにハッキリ
とは理解できていない。

恐らく作者は、「さまざまな愛の形」を描きたかったのだろう。
いろいろな男女が登場する。

主人公の冷たさと、彼を追う警察署長の熱さの対比がとても面白かったと思う。

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