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巫女のような男
(2008-06-28)
いかにもご本人が思いつくままに喋くっている、というノリの自伝。口述筆記じゃないかしら。前半は一応自伝の体裁を成しています。お母さんはドイツ人で、なんと1912年あたりに生まれた方だとか。精神文化的には19世紀中欧の上流階級の人だったんですね。貴族的でエキセントリックでアル中で、戦中の思い出に苛まれて自殺未遂を繰り返す母親の様子が大変に痛切です。私はこの辺りが既に本書の山場ではないかと。「物心ついた頃からお母さんのようになりたかった」と。母のアル中から逃げる為にリヴァプール通いを始め、13歳で知合いの男性に半強制的に性交渉を持たされ、やがて奥さんと出会い、一緒にブティックを経営し…実にスピーディな話運び。
後半は時系列が崩れ出し、精神病院収容談など何年頃の話なのか。突然輪廻念転生や霊感について話が飛ぶし。顔面崩壊と顔面再建手術の過程は唖然茫然のホラー話ですが、この分野としては世界初の幹細胞治療だったということですから、貴重な経験談でしょう。日本での大成功についても語られますが、子供の頃に京都の幻影を見て日本との縁を予知していたそうな。
ラストにかけてはやたらめったら同衾相手の話が登場して退屈。正体不明のヒモ男なんかより元妻や幼馴染のドラマー(スティーブ・コイ)の話でもして欲しい。この二人こそが著者の最も身近な人間関係でしょうし。
作りこまれていない分、ご本人のキャラがよく出ています。感情過多の人です。普通の人より皮膚が薄い感じ。自分は断じて犠牲者ではない、親の犠牲にも社会の犠牲にもなっていない、と繰り返す誇り高さの裏にいかにも脆い部分を感じる辺りも魅力かしら。古代部族社会でなら神官とか呪術師なんかの役割を持ちそうな人よね、などと思いました。頭の半分は異世界に行っている。自由だ多様性だと騒いでも結局は画一的なのが現代社会ですから、生き難かったことでしょう。

